角川春樹

退屈な大人にならなかった横山雄二。
かつての映画少年、野球少年が中年になって生みだした瑞々しい監督作品。
前作の「浮気なストリッパー」は、

つかこうへいの「ストリッパー物語」を連想させたが、
今度の「愚か者のブルース」は紛れもない横山雄二の世界!
本年度の邦画の中でも、一番こころに響いた作品。
映画としても、一冊の小説としても充分に成立するドラマだ。

​角川春樹…「犬神家の一族」「復活の日」「セーラー服と機関銃」「時をかける少女」等をプロデュース。

村西とおる

広島の場末のストリップ劇場を舞台に、落ちこぼれの映画監督とその情婦と

借金でクビが回らなくなった劇場主の「男は夢に死に、女は愛に生きた」物語。

華やかさとはほど遠い侮蔑の人生絵巻が切なく、鬼才・横山雄二監督の演出・演技に目を剥いた。ナイスですね。
 
村西とおる…前科7犯、抱えた借金50億。「昭和最後のエロ事師」全裸監督。

映画プロデューサー 森田芳光事務所

三 沢  和 子

タマコからだけ常に「監督」と呼ばれている監督。2人の関係が切ない。
加藤雅也さん、熊切あさ美さんは勿論、出演者全てが魂の籠った好演
(横山雄二さんの演技にも驚きました)で、
森田芳光のポリシー「映画は登場人物の人間を描くことが1番大事」を
横山さんが忠実に実践して下さいました。
監督はじめキャスト、スタッフの強い思いが作品の力となっていると思います。
そして森田のロマンポルノ作品「マル本噂のストリッパー」の
主人公グロリア由来のグロリアさん、男前な最高のオンナでした。
 
三沢和子…「キッチン」「(ハル)」「39 刑法第三十九条」「黒い家」「海猫」などのプロデューサー。

漫画原作者

田島 隆

横山雄二。地元広島では、明るくて面白い人気アナウンサーと誰もが思っているだろう。
だが、私の知る横山雄二はアナウンサーの枠に収まる人物ではない。
彼の正体を端的に言えばクリエイター。それもとびっきりクラスだ。
そう、嫉妬心を覚えるくらいに。
この「愚か者ブルース」は、クリエイターとしての彼のセンスが眩いばかりに輝く。
この映画を見て後悔する者はいないと断言したい。
さぁ、横山雄二の世界を堪能あれ!
 
 
田島 隆 …「カバチタレ!」「極悪がんぼ」「びったれ!!!」「マトリと狂犬〜路地裏の男たち」(ヤングチャンピオン連載中)など

映画評論家 伊庭あきお

【ストリップ劇場と横山雄二監督】

 

「ストリップ劇場を舞台にした映画は、これで三部作。ラストになります」と監督は言った。

横山雄二監督にとって、どうやらストリップ劇場は作品作りに欠かせない場所だったようだ。私は1997年にスタートした横山監督出演の、伝説の深夜バラエティ番組『KEN-JIN』のことを良く覚えている。今では考えられないストリップ劇場の楽屋から生放送。横山監督が裸の踊り子とビールを飲みながら、毎週、爆笑トークを繰り広げていた。当時、大学生だった私は、いつ見えてはいけないものがテレビから見えてしまうのか?とヒヤヒヤ…いや、ワクワクしながらブラウン管を見つめていた。愛染恭子に桜樹ルイ、後藤えり子に矢沢ようこ。当時の大スターたちが横山監督の話芸にまんまと引っ掛かり、まるで着衣と共に素顔を脱がされるかのような赤裸々トークを披露していた。刺激的だったし、面白かった。

 

それから18年後、アナウンサーでもある横山雄二の初監督作品のタイトルを聞いて、笑ったし驚いた。『浮気なストリッパー』そして、作品の舞台となったのは「あのとき」テレビで観ていた広島第一劇場だった。この人は根っからの好色者なんだとの思いと、まだ劇場と横山雄二の関係は続いていたのかとノスタルジックな気持ちにもなった。

「一度、出来た関係を切らない」

この言葉は、いみじくも、売れなくなった有吉弘行を同志として使い続けていた横山監督が、雑誌のインタビューで答えていたものだ。

横山監督は、自らの監督デビュー作の舞台をお世話になったストリップ劇場に定め、そしてまた、初プロデュースを手掛けた時川英之監督の『彼女は夢で踊る』の舞台にもした。

 

コロナ禍の2022年。満を持して横山監督が放ったオリジナルストーリーの舞台もまたまた広島第一劇場だった。これで最後!「三部作」となる。「裸ひとつでパフォーマンスを繰り広げるストリッパーへの敬愛と、ギラギラしたストリップ劇場への憧れは10代の頃となにも変わりません」と横山監督は言った。『愚か者のブルース』にはリアルな第一劇場解体のシーンが挿入されている。横山監督は「劇場の最後は僕が作品に納めますと館長と約束していましたから」とさらりと言ってのけた。女が主役の世界で、男と男の約束を果たす。嫉妬にも近い感情が芽生えた。格好いいなぁ横山雄二!そして、スクリーンで観る「第一劇場」はどんなセットやロケ地よりもイカシた面構えをしていた。ストリップ劇場から始まった横山監督の作品作りは、ストリップ劇場の最後の瞬間をフイルムに焼き付けると言う奇跡の必然を手繰り寄せた。昭和の香り漂う映画『愚か者のブルース』は、失いつつある風俗文化のラストをエンターテインメントとして捉えた映画史にも社会史にも残る一本である。

映画監督

西 川  美 和

映画が全ての人々の夢で、映画監督がやみくもにモテて、コンプラもクソもなく、
世界の宝として道をあけられた時代が生き生きと再現されていますが、
現実に映画監督として今を生きる私は、いたたまれずに思わず
目を伏せるところもありました。
実際の日本の映画はすでにその地位も人気も自由の多くをも他の表現に
明け渡してしまい、カスカスに貧しくて、多くの夢はまっさらに
濾過されてしまったからです。お前たちの世界は、俺たちの夢を
どうしてくれたんだよと怒りをなげかけられたような気持ちにもなりました。
横山さんは笑いながら、いつも、激しく怒っています。
 
ありあまる人間力と、絶対的な語り部としての才能を持ち、
毎朝生のラジオで2時間半フルスロットルでしゃべくり倒しながら、
それでも映画を撮りたくて撮りたくて撮りたくて、
実際に撮ってしまう俺を(あんな芝居する局アナいます?)
お前たちはどう思うのだ、お前は俺ほど映画を撮りたくはないだろう、
いやそうに違いない、なんとか言ってみろと、
こんなに絞られた気持ちになる映画もまた他にありませんでした。ひたすら汗。
 
西川美和(映画監督)代表作「ゆれる」「ディア・ドクター」「永い言い訳」「すばらしき世界」
など。

漫画家

東 村  ア キ コ

「いや〜びっくりしました!!横山監督、いつの間にこんな映画を作っていたんですか!?
これ、本当にまるであの頃の、日本の映画が一番面白かった頃の雰囲気‥そう、
男たちがバカで熱苦しい、でもカッコいい。そんな最高の映画ですよ!!」
 
東村アキコ(漫画家)代表作は「海月姫」「ママはテンパリスト」「偽装不倫」
「東京タラレバ娘」など。